20.4. 生態系生態学
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生態系 ecosystem
ある空間に分布する種の群集に加えて、すべての非生物的要因を含む
すべての生態系を支える2つの主要な過程を示す微小生態系(マイクロコズム)
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エネルギー流 energy flow
生態系の構成要素を通過するエネルギーの経路
光エネルギー→化学エネルギー→熱エネルギー
光合成によって獲得されたエネルギーの多くは熱として失われるため、この生態系は太陽からの連続的なエネルギーの流入がなくなるとエネルギー不足に陥る
化学的循環 chemical cycling
生態系内の炭素や窒素のような化学元素の利用と再利用
ほとんどの生態系は日光から一定のエネルギー加入がるが、分子を構成するのに用いられる化学元素の供給は制限されている
炭素や窒素のような化学元素は生態系の非生物的な要素と生態系の生物的な要素の間を循環している
つまり、エネルギー流と化学循環はともに、生態系の栄養段階を通じた物質の移動
しかし、エネルギー流は生態系を通じて最終的に系外に出ていくが、化学的な物質は生態系内や生態系間を循環する
生態系のエネルギー流
すべての生物はエネルギーを必要とする
この先2つのいに答えたい
食物連鎖の長さを制限する要因はなにか
エネルギー流に関する知識は、人間の資源利用にどのように適用されるか
一次生産と生態系のエネルギー収支
地球は約10^19kcalの太陽エネルギーを浴びており、これは約1億個の核爆弾と同じエネルギーに相当する
このエネルギーのほとどは、大気や地表に吸収、散乱、あるいは反射される
植物、藻類、シアノバクテリアに到達する可視光はわずか約1%で、それが光合成によって化学エネルギーに転換される
現存量 biomass
生態系内の生きている有機物の量あるいは重量
一次生産 primary production
生態系の生産者が、一定時間内に太陽エネルギーを化学エネルギーに転換し有機化合物に転換した量
全生物圏の年間あたりの一次生産は約1650億トン
なお、この生産のすべてが有機物として蓄えられるわけではない
植物はその一部を自身の細胞呼吸のエネルギーとして用いる
純一次生産 net primary production
一次生産から一次生産者が呼吸のために消費したエネルギーを差し引いたもの
生態系によって純一次生産はかなり異なり、生物圏の総生産への寄与も異なる
サンゴ礁もとても高い生産を示すが、サンゴ礁の専有している面積は小さいので地球全体での生産への寄与はとても小さい
興味深いことに、外海の生産はとても低いが、外洋の面積はとても大きい(地表約65%)ので、地球全体の純生産への寄与は最も大きい
どのような生態系であれ、一次生産が生態系全体のエネルギー収支における消費の上限を設定する
なぜなら、消費者は生産者から有機物燃料を獲得しなくてはならないから
生産ピラミッド
エネルギーが有機物として生態系の栄養段階を流れる場合、食物連鎖の各鎖でエネルギーの多くが失われる
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生産ピラミッド pyramid of production
食物連鎖中の各段階で失われるエネルギーの積算量
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生産者は利用可能な日光のエネルギーの約1%しか一次生産に転換していないことに注意してほしい
ある栄養段階のエネルギーの80~95%は、次の段階へは移行しない
栄養構造におけるエネルギーの段階的な現象が示す重要な点は、最上位の消費者が利用できるエネルギー量は、より下位の消費者が利用できるエネルギー量に比べて小さいということ
これは、ライオンやタカのような上位の消費者がとても大きな縄張りを必要とする理由
また、ほとんどの食物連鎖は3~4段階に制限される理由も理解できるだろう
たとえば、ライオン、タカ、シャチのような最上位の捕食者の場合、彼らの個体群の生物量は、もう1つ上の栄養段階を支えるには不十分
生態系のエネルギー特性と人間の資源利用
エネルギー流の動態は、他の生物と同じように、ヒト個体群にもあてはまる
雑食者である人間は植物質や肉を食べる
穀類、果実、野菜を食べる場合、一次消費者
牛肉などの草食者の肉を食べる場合、二次消費者
マスやサケのような魚を食べる場合、三次消費者、あるいは四次消費者
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ヒトがトウモロコシを食べた場合、トウモロコシで育てられた牛肉を食べたときよりも、ヒトの利用可能なエネルギーは多くなり、そrで支えられるヒト個体群は約10倍になる
肉を食べることは経済的に環境的にも高くつく
ヒトが消費する肉を生産することは、穀物を育てるために用いられるよりも多くの耕地を必要とし、そのことは多量の肥料や農薬、灌漑用の多量の水を使用することを意味する
生態系の化学的循環
化学元素は、ときどきの隕石の落下によるものを除けば、地球の外から供給されることはない
よって、生物は化学物質の循環に依存している
ある意味、各生物は生態系の化学元素を借りているだけで、死亡したら体内の化学元素は生態系に戻される
化学的循環の統合モデル
生物地球化学的循環 biogeochemical cycle
生物的要素と非生物的要素の両方の生態系の化学的循環
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非生物的貯蔵庫 abiotic reservoir
化学的な貯蔵物は生きている生物の外にあることに注意
大気は非生物的貯蔵庫
リンは土壌からのみ利用可能
水界生態系の水は、溶解性の有機炭素や、窒素およびリンの化合物を含んでいる
1) 生産者は化学物質を非生物的な貯蔵庫から有機化合物に取り込む
2) 消費者は生産者を摂食し、それに含まれる化学物質を体内に取り込む
3) 生産者と消費者の両者とも一部の化学物質を排出物として環境中に放出する
4) 分解者は、植物の落葉や動物の排出物および生物の遺体などのデトリタス中の複雑な有機化合物を分解する中心的な役割を担う
この代謝の産物は無機化合物で非生物的貯蔵庫を再補充する
侵食や母岩の風化のような地質的過程も非生物的貯蔵庫に寄与する
生産者は非生物的貯蔵庫の無機化合物を原材料として利用し、新たな有機化合物を合成する
生物地球化学的循環は、地域的であり地球的でもある
たとえば化学物質であるリンの循環は、少なくとも短期的には地域内で完結している
地域的な循環において土壌は栄養素の主要な貯蔵庫
対処的に、一時的にでも期待になる炭素や窒素のような化学物質の循環は地球的なものになる
炭素循環
炭素の非生物的貯蔵庫は、大気、化石燃料、海洋中の溶解性炭素
光合成と呼吸の相補的な代謝過程が、生物と非生物の間の炭素循環の原因
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1) 光合成は大気から二酸化炭素を除去し、それを有機化合物に組み込む
2) その有機化合物は消費者によって食物連鎖に沿って受け渡されていく
3) 細胞呼吸は二酸化炭素を大気に戻す
4) 分解者はデトリタス中の炭素化合物を分解し、最終的に二酸化炭素として放出する
地球的なスケールでは、呼吸による二酸化炭素の大気への還元と、光合成による二酸化炭素の除去は、とてもバランスがとれている
5) 木および化石燃料(石炭や石油)の燃焼による二酸化炭素濃度の上昇は、地球の気候変動に影響している
リン循環
生物は、核酸、リン脂質、ATPの原料、および(脊椎動物の)骨や歯の無機成分としてリンが不可欠
リン循環には大気の構成成分がない
岩石が陸上生態系のリンにとって唯一の源
実際、リンの含有量の高い岩石は、肥料の原材料として採掘されている
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1) 岩石の風化によって無機リン(PO4 3-)が土壌に徐々に加わる
2) 植物は溶解性リンを吸収し、リン元素を有機化合物に組み込むことにより同化する
3) 消費者は植物によってつくられた有機体を摂食してリンを得る
4) 動物の排出物および植物や動物の遺体は、分解者によって分解され、その過程でリンは土壌に戻される
5) 一部のリンは陸上生態系から海に流れる
そこでリンは堆積し、最終的に新たな岩石になる
6) 地質的過程が岩石を隆起させそれらを風化させるまで、生きている生物には利用されない
風化は通常ゆっくりとした過程
よって生態系の植物に利用可能なリンの量はとても少なく、制限要因になることが多い
農家や造園家は粉砕されたリン石、骨粉、グアノを利用し、土壌にリンを付加することが多い
グアノは海鳥やコウモリの糞で、高密度の繁殖地や洞窟に数メートル堆積した場所で採掘される
窒素循環
タンパク質および核酸の構成要素として、窒素はらゆる生物の構造や機能にとって不可欠
特に窒素は植物にとって重要な制限栄養因子
窒素の非生物的貯蔵庫は大気と土壌の2つ
大気の貯蔵庫は巨大で、大気の約80%は窒素ガス(N2)
しかし、植物は気体として窒素を同化することはできない
窒素固定 nitrogen fixation
気体性のN2がアンモニアや硝酸に転換され、それらが植物に利用される
わずかな量の窒素は、落雷のような高エネルギー過程で固定される
しかし、生態系で利用可能な窒素のほとんどは、特定の微生物による生物学的な固定でもたらされる
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1) ある細菌が特定の植物種の根に共生し、宿主植物が利用できる窒素の源を提供する
この相利関係を持つ植物の最も大きなグループは、ピーナッツ、ダイズ、クズなどを含むマメ科
2) 土壌や水中に自由生活している窒素固定細菌はN2をアンモニウムイオン(NO3-)に転換する
N2は土壌中の空隙で利用可能で、水にも溶け込む
3) 窒素が「固定された」跡、NH4+の一部は植物に取り込まれ利用される
4) 土壌中の硝化細菌も、一部のNH4+を硝酸塩に転換し、
5) それはより容易に植物に同化される
植物は窒素を利用してアミノ酸のような化合物を合成し、それからタンパク質をつくる
6) 草食者は植物を摂食し、植物質中のタンパク質を消化してアミノ酸にし、それから草食者が必要とするタンパク質をつくるためにそのアミノ酸を用いる
より高次の消費者は、被食者の有機化合物から窒素を得る
また、窒素を含む排出物は、タンパク質代謝の過程で形成される
つまり、消費者が自身の体に窒素組み込む際に一部の窒素を排出する
ウサギのような哺乳類が排出する尿は、窒素を含む物質で肥料として広く用いられる尿素を含んでいる
7) 分解によって有機化合物からNH4+が土壌中に放出され、土壌の窒素貯蔵庫を再補充する
しかし、低酸素条件では、
8) 脱窒菌として知られている土壌微生物がNO3-から酸素原子を奪いN2を大気に還元し、土壌貯蔵庫における利用可能な窒素を減少させる
図示されていないが、一部のNH4+やNO30はN2やアンモニアガス(NH3)が関係した化学反応によって大気中でも作られる
これらの化学反応で生成されたイオンは降雨や塵となって土壌に到達し、一部の生態系における植物の重要な窒素源になる
栄養物による汚染
栄養物(とくにリンや窒素)の低いレベルは、水界生態系の藻類やシアノバクテリアの成長を制限することが多い
栄養物による汚染は、人間活動によって過剰な量の化学物質が水界生態系に付加された場合に生じる
多くの地域において、農業肥料によってリン汚染が発生している
リンのその他の主要な源は、下水処理施設からの流出および家畜の飼育場からの動物の排出物の流出など
湖や河川のリン汚染は、藻類やシアノバクテリアの過剰な成長を引き起こす
微生物は過剰な現存量を分解する際に、大量の酸素を消費し水中の酸素を枯渇させる
これら一連の変化は、水界生物の種多様性を減少させる
下水処理施設は、ひどい嵐のような極端な条件の場合、あるいは施設がうまく機能せず水質の基準を満たさない場合、大量の溶解性無機窒素化合物を河川に放出する
農業から放出される窒素の源は、飼育場や定期的に作物に与えられる大量の無機窒素肥料
芝生やゴルフ場にも、相当量の窒素肥料が散布さ荒れる
作物や芝生植物はいくらかの窒素化合物を吸収し、脱窒菌がそれらの一部を大気に還元する
しかし、硝酸は土壌粒子に強く結合されていないので、雨や灌漑によって容易に流れ出る
よって、化学肥料は、土壌の自然の循環能力を上回ることが多い
北アメリカ中西部の農場から流れ出た地租は、メキシコ湾で毎年発生する「死の領域」と関係していた
広大な藻類の大発生は、ミシシッピ川の窒素を含んだ水が湾に流れ込むところから広がっている
藻類が死亡すると、膨大な量の現存量の分解が、13000km²から22000km²に及ぶ海域の溶存酸素の供給を減少させる
酸素の枯渇は底生群集を崩壊させ、移動できる魚や無脊椎動物を追い出し、基質に固着している生物を死滅させる
このようなことが世界中で400回以上繰り返され、海岸部の永続的な死の領域を合計すると約245000km²に及ぶことが報告されている
→20.5. 保全と復元生物学